2008-08-11

Su Cilgin Turkler/トルコ狂乱

2008.08.11

 2週間以上のご無沙汰でした。
 この本を読んでいるあいだ、ずっとパソコンから離れていたのと、8月から再び〈書く〉仕事を始めてしまって、ちょっと書くことから遠ざかってしまいました。 相変わらず暑いですが、みなさんお元気でお過ごしでしょうか?

 さて、トルコで空前の大ベストセラーとなった『Su Cilgin Turkler』という本が日本語に翻訳され、『トルコ狂乱』というタイトルで7月23日に発行されました。数ヶ月前に日本語で出るらしい……という話は聞いていたのですが、出版社がどこか分からず頭の片隅にはあるけれど行動できない、という状況。偶然7月26日に来日したトルコ人の友人と晩ご飯を食べているときに「日本でも出版されたらしいね。新聞で読んだよ」と言われ、「えーっ!!! じゃあ、すぐ買いに行くっ!!!」と本屋に走り、約1週間で読み切りました。

 この本、副題が「オスマン帝国の崩壊とアタチュルクの戦争」となっているのですが、時期的にはイギリスのサポートを得てギリシャがアナトリアに攻め入り、後退したトルコが最後の戦いを仕掛ける、サカリヤ会戦前〜サカリヤ会戦〜イズミル奪還までを描いています。
が、純粋な歴史書ではなく、“小説”です。司馬遼太郎的な手法で書かれた本と言うと分かりやすいでしょうか。実際、読んでいる途中で何度も『坂の上の雲』を読んでいたときに似た感じを覚えました。

 司馬遼太郎の小説手法、また“司馬史観”と言われる歴史の見方には賛否両論ありますが、歴史に興味を持つ、歴史上の人物を知るきっかけとして、小説のカタチで歴史を記す、という方法にはある程度の効果があると思います(もちろん、その“小説”世界がすべてと思ってしまうと少々問題アリなのですが)。『トルコ狂乱』の著者トゥルグット・オザクマン氏は、最近のトルコの若者が自国の歴史を知らない(共和国建国の過程を知らない)ことを憂慮して筆を執った、といった類いのこともおっしゃっていて、入り口としては入りやすい入り口を作られたな、と思います。※写真がトゥルグット・オザクマン氏:どこかの本屋でのサイン会らしい(Vikipediaより)

 わたし自身、これまでトルコ建国についての(主にアタチュルクの)本を何冊か読んできましたが、いままでで一番「アタチュルクのトルコ」ではなく、「フツーのトルコ人のトルコ」が見えた本だったように思います。『トルコ狂乱』を読んで感じたのは、「現在のトルコを作ったのはアタチュルク個人ではなく、アナトリアに住んでいたフツーのトルコ人が、初めて“トルコ人”としての自覚を持って独立解放戦線に臨み、共和国建国の礎になったのだ」ということでした。アタチュルクは建国の父と言われますが、その母となったのは、間違いなくこの国民だったのだ、と思わされました。

 第一次大戦中に起こったアルメニア人の問題など「未解決」の問題が断定的にトルコ側からの視点で論じられるという部分もありましたが、現在のトルコがいかにして生まれたのか、“生みの苦しみ”がいかなるものであったかを知るには良い1冊ではないかと思います。また、この頃のトルコは帝国主義の何たるかを知るにも分かりやすいためオススメです。
 訳者あとがきによると、本著書はトルコで正規版が60万部、そして海賊版が300万部売れたという驚異の大ベストセラーだったそう(海賊版が正規版の5倍売れているあたり、トルコだなぁと、ちょっと可笑しかった。でも合計で360万部です)。3990円と高いのがちょっと痛かったけど、改めてトルコ共和国を生い立ちを学び直せた気がしています。 ※写真は大阪・堂島アバンザにあるジュンク堂書店に並んでいるところ。本屋によって〈小説〉コーナーに置いてあるところもあれば、〈人文科学〉系コーナー(専門書)に置いてあるところもあったりして、ややこしい。


 本当は前回の「チーズ天国」のつづきを書く予定にしていたのですが……(またいつか機会があれば書きます)。

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