2008-07-23

宗教という壁

2008.07.23

 じぶんでも答えのでないことについて書くのはどうか、とも思うのだけれど、やっぱり気になったので取り上げました。きょうはRadikal/ラディカル紙で見つけた記事から。

 Almanya'da Musluman korkusunun simgesi/ドイツにおけるムスリム恐怖の象徴

 そう題された記事の内容は……というと。
 「ドイツでは、いま現在180を超えるモスクの建設が計画されている。特に、金曜礼拝のときにモスクはいっぱいになり、ベルリンにあるウェディング地区のモスクでは場所の見つけられない信者が通りに溢れる。モスクは、ただ礼拝のためだけでなく、ムスリムにとっては文化的共有が行なわれる場所であり、また社会的な活動が活発なところもある。特にラマザン(断食月)にはトルコ人だけでなくドイツ人に対しても食べ物がふるまわれる(イフタル・ソフラスと呼ばれるもの)モスクもある。

 一方で、ドイツにおいてモスクの数が増えていることは、右派だけでなく左派の政治家たちをも動揺させている。政治家たちは、ムスリム自身のライフスタイルで生きる社会が、モスクによってより簡単に実現されると考え、またそれを恐れている。

 ドイツのケルン市エーレンフェルト地区に、トルコ・イスラム連合(という団体)が建築したいと考えている現代的な中心的モスクが、いまこの恐怖の象徴となった。建築されるのは原子力発電所やミサイル基地ではない。しかしドイツ人を中心に波及した恐怖はこれらに等しい。年老いたドイツ人女性は『ミナレット(尖塔)がミサイルを思い出させる』と語った(同モスクは高さ50メートルを超えるふたつのミナレットを備える)。このモスクは、ケルンで暮らし、特に金曜礼拝において場所を見つけられないという問題を抱えるドイツのトルコ人にとって大きな意味を持っている。

 ケルン市のフリッツ・シュラマ市長は「モスクは、イスラムを裏通りから中心部へと連れ出し、おそらくは狂信的なムスリムたちの影響から救いだす」と語った。
 ドイツ人の大部分はケルンのモスクを、過激派イスラムと、ケルンで暮らすおおよそトルコ人からなる12000人のムスリムとの統合否定のシンボルとして見ている。

 ドイツのムスリム化の第一歩と見られる巨大なケルンのモスク建設を阻止するため、プロ・ケルンという名の過激右派の団体が設立され、ケルンの市議会選挙において5席を獲得。また、プロ・ケルンは、4月17日にトルコ・イスラム連合に対し、モスク建設を中心させるためのデモを敢行。デモにはドイツ人だけでなく、オーストリアやベルギーの過激右派政党の代表たちも参加した。過激右派は、ドイツにおけるモスクの増加により、ムスリムが急進的かつトラブルの種になると主張している。

 トルコ・イスラム連合のサディ・アルスラン会長によると、この恐怖は不必要なものであり、危険なものではないと語っている。
 ドイツ社会からの反対により、モスクのサイズは縮小された。しかし、ミナレットの高さ、長さについては譲歩されなかった。いずれにせよ、ケルンのモスクに関する議論は長期化する見通しだ」

 以上が記事の要約。

 どうなんでしょう? わたしはいま京都に住んでいますが、この街にたとえばカソリックがすごく増えたとして、巨大なカソリック教会ががんがん増えたら……(ちなみに街には教会もたくさんありますが、それほど目立ちません。教会の鐘は聞こえてくるけど。あと京都御所の東側、寺町通り沿いにも教会があります)。いや、別に増えても構わないけど、清水寺の前あたり、産寧坂の途中にどどーんと教会が建ったら、やっぱりイイ気分ではないような気がする。それは景観的な違和感……ってことなんだけど。
※写真は京都・柳馬場通夷川下ルにある京都ハリストス正教会、上京区下立売通烏丸西入ルにある聖アグネス教会(←ふたつとも、むしろ京都に馴染んでいる感がある)

 反対に時代の流れ、歴史の流れとして、変わっていくことはすごく自然なことのようにも思えます。わたしたちが当たり前と思って見ているものだって、実はどんどん変わっている。歴史あるヨーロッパの街だって100年前と同じかと言えば全然違うわけで。もし、景観を守るっていう意味で異文化的なものを拒むのだとしたら、ここ100年のあいだに建てられた近代的なビルなんかはいいのか、ってことになる。世界遺産に登録されているような歴史地区にマクドナルドやスターバックスが乱立するのはいいのか? 歴史的に意味のある遺跡の上にホテルを建ててもいいのか? 京都だって実際どんだけマンションが乱立していることか。町家、町家と言われるけれど、実際町家はマンションの谷間にひっそりと建っている。

 ドイツという国が、第二次世界大戦を経て国家再生のために移民を奨励した時代があり、その結果としていま現在のドイツがある。そう考えればモスクが建つのも時代の自然な流れなのでは? と思います。ケルンに建設予定のモスクが世界遺産にも登録されているケルン大聖堂のすぐ近くに、まるで対抗するように建つ、というなら問題かなとは思いますが(でもケルン大聖堂の高さは157メートル。50メートルのミナレットなんて小さい、小さいっ)。ミナレットも50メートルっていうけど、どれくらい目立つものなのか。京都タワーは100メートルだけど、河原町辺りからじゃまったく見えない。それに、モスクが必要なほど移民が増えているってことが、戦後ドイツの現実でもあるのだし。

 今年はブラジル移民100周年だけど、ブラジルには日本の仏教がどれくらい浸透しているのかな(新興宗教も多いらしいけど)。ドイツでのモスク建設反対の記事を読んで、ブラジルにおける宗教はどうなのだろうと、ちょっと気になりました。

2 comments:

  1. とても参考になる記事でした。日本におけるトルコ情報と日本人関係者もっと増えてほしいですよね。増えて、かつ日本人同士も仲良くやってほしい気も個人的にはしますが。

    これからもがんばってくださいね。

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  2. コメント、ありがとうございました。
    最近は更新が滞りがちですが、やっぱり好きなのでトルコ情報限定で更新をがんばります。

    改めて、ありがとう。

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