2008.05.28
先日、カンヌ映画祭で『Uc Maymun/Three Monkeys』をコンペティション部門に出品していたNuri Bilge Ceylan/ヌリ・ビルゲ・ジェイランが見事監督賞を受賞した、と書きましたが、昨日のZaman/ザマン紙でもう一人受賞したトルコ人がいたことを知りました。しかも最高賞のパルムドールを。
今年、第61回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したのは、ローラン・カンテ監督作『Entre les Murs/英題The Class』。フランソワ・ベガドーの自叙伝が原作の同映画は、フランスのある中学校を舞台に家庭事情や言葉の壁、素行の悪さなど、さまざまな問題を抱える生徒たちを相手に教師が奮闘するというストーリー。で、受賞したトルコ人とは?
監督や原作者であり、主演のベガドー(原作者自身が教師を演じている)とともにパルムドールを審査委員長ショーン・ペンから受け取ったのはBurak Ozyilmaz/ブラク・オズユルマズくん(15歳)。同映画に学生役として出演しています(写真でもホラッ、ちゃっかり監督の肩越しに写っていますよ)。移民の多いフランスの混合社会を学校を舞台に教師の目を通して描いた、というこの映画。学生役で出演しているのはフランスの学校の生徒から選んだ素人の俳優さんなのだとか。そのなかにサムソン出身の両親(記事ではフランスへの出稼ぎ労働者と書かれていました)をもつブラク・オズユルマズくんがいたわけです(役的にもトルコ系移民の子ども、という設定なのかも)。
パリに暮らす15歳のブラクくんは受賞後「嬉しすぎて戸惑っています。ショックです。1番になれるなんてまったく思っていなかったから。とても感動的な瞬間で、みんな泣いちゃいました」とZaman/ザマン紙に語ったそう。本当は映画祭最終日に何人かの役者友達といっしょに「もうパリへ帰っちゃおう」と決めていたらしいのですが、受賞の知らせを聞いて急遽予定変更。授賞式に出席したそうです(写真:左の方で黒ぶちの眼鏡をかけているのがブラクくんです)。
トルコの黒海地方・サムソン出身で、パリへ出稼ぎ労働者としてやってきた両親のもとで育っているブラクくんですが、なんでも毎年夏にはトルコに里帰りしているそう。まだ15歳だし、おそらくパリで生まれてパリで育っているのではないかな……?と思うのですが、おうちではトルコ語を話しているのかもしれません。
ブラクくんのお父さんSezer Ozyilmaz/セゼル・オズユルマズさんは、メディアからの質問に「家族としてとても嬉しいです。彼のこれからのために、まずは教育を与えたいと思っています。そのあとは、まぁどうなるか見守りましょう」と答えたよう。もともと役者志望というわけではなく、あくまで生徒役として素人から選ばれたわけですから父親としては当然のコメントかな。でも、ブラクくんはこれをきっかけに役者に目覚めちゃうかもしれませんが。
ネットでニュースを読んでいると、最近はカンヌでの大きな取り引きは縮小傾向にあるとか。買い付け額が高いというのはもちろんだけど、日本国内での洋画市場の低迷も大きな原因になっている模様です。たとえ取り引きがあったとしても劇場用ではなく、ビデオ用として。つまりロードショーとして映画館では見られず、レンタル&販売DVD用としてのみ購入されているようなのです。比較的日本に入ってきている米国映画でさえ縮小傾向だと言いますから、果たしてこの作品が見られるのかどうか現時点では不明。いろんな国で作られた、いろんな映画が見たい人にとっては哀しい現実が立ちはだかります。。。
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