2008-05-16

Uc Maymun/三猿

2008.05.16

 先日5月14日に第61回カンヌ国際映画祭が開幕しました。オープニングの『ブラインドネス』という映画には木村佳乃さんと伊勢谷友介さんも出演していたため、メディアでも大きく取り上げられていましたね。

 さて、そんなカンヌの気になるコンペティション部門に、以前このブログでも取り上げたNuri Bilge Ceyran/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の『Uc Maymun/Three Monkeys/直訳すると、三猿』という作品が出品されています。
 ※以前のブログはこちら
 監督本人のウェブサイトでの紹介によると「ちょっとした落ち度が大きな嘘に発展し、バラバラになった家族が真実を隠しながらともに暮らそうと格闘する。耐え難い困難と責任から逃げることで家族は真実を無視する方を選ぶ。何も見ず、聞かず、話さないことで。“三猿”を演じることは、果たして真実をなかったことにするのか?」



 なかなか気になる内容だと思いませんか? シネマ・トゥデイのカンヌ特集ページには「登場人物に対して観客が感情移入するのを拒むことで、逆に効果をあげるなど独自の手法が魅力」と書かれています(あぁ〜、だから『移ろいの季節』でわたしは主人公の男性に共感できなかったのか……??)。
 個人的には、やはり映像が気になります。監督のウェブサイトには映画の写真ギャラリーがあるのですが、空の表情が異常に美しい。演じている役者以上に空が何かを物語っているような、そんな気のするひとコマが切り取られています。この人は、やっぱり映像(絵)の使い方がうまいのかもしれません。 というか、視点がカメラマンなのか?

 さて、1995年のカンヌ初登場以来、もはやカンヌの常連と言っても過言ではないジェイラン監督。本作でトルコ映画史上における同映画祭への出品記録を塗り替えたと話題になっているそうですが、結果はいかに?
 ざっと見ただけでも・・・
さきほど紹介したフェルナンド・メイレレス監督の『ブラインドネス』
クリント・イーストウッド監督の『チェンジリング』
スティーブン・ソダーバーグ監督の『チェ』(ゲバラ伝記映画)
チャーリー・カウフマン監督の『シネクドキ、ニューヨーク』
フィリップ・ガレル監督の『ラ・フロンティエール・デ・ロープ』
ジャ・ジャンクー監督の『24シティー』(オフィス北野出資作品)
アトム・エゴヤン監督の『アドレイション』
ヴィム・ヴェンダース監督の『パレルモ・シューティング』
ダニエラ・トマス&ウォルター・サレス監督の『リンハ・デ・パッセ』
アリー・フォルマン監督の『ワルツ・ウィズ・バシル』(アニメ作品)
……などなど、錚々たるメンバーが顔を揃えています。

 このほかにもフィリピン人の監督さんによる『マイ・マジック』『サービス』、アルゼンチン人監督の『レオネラ』、イタリアから出品の『ゴモラ』、ベルギーのダルデンヌ兄弟監督作『ル・シランス・デ・ローナ』などが控えていて、なんだか混戦模様。個人的には『シネクドキ、ニューヨーク』『24シティー』『ワルツ・ウィズ・バシル』あたりが気になります(ジェイラン監督作は言わずもがな)。

 ところで、トルコでも「三猿」ってあるんでしょうか? 実は一番気になったのは、このタイトルで……。仏教的なもんだと思ってましたが、わたし。あぁ、でも英語で「See no evil, hear no evil, speak no evil」って言いますもんね。あれって同じ意味だったはず。……と思って調べてみたら、ほぇ〜、そーなんやと妙に納得。※Wikipedia(勉強になりますぅ〜♪) きっとトルコにも似たようなものがあるのでしょう。ちなみにトルコ語では「Uc maymunu oynamak(三猿を演じること)」と言うようです。

 この映画、日本でも買い手がついて公開されることを望みます。そのときのタイトルはズバリッ!『見ざる・言わざる・聞かざる』でしょう(……って、誰も見なさそうだな、これじゃあ・汗)。

 ※写真はすべてジェイラン監督のウェブサイトから(←こちらがサイトのトップページ)。このサイト、ジェイラン氏の映画監督の仕事、フォトグラファーとしての仕事の両方が見られるようになっています。興味があったら''Photography''の文字をクリック! いいですよぉ〜。これを見ても彼の映像感覚、構図感覚などが映画製作に反映されているなぁ〜と分かります。

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