2008.06.25
今夜(日本時間27時45分)にEURO2008準決勝、ドイツ vs トルコ戦がキックオフとなります。
そのまえに、いつも取り沙汰される話について書きたいと思います。日韓W杯のときにもトピックになったことです(ドイツW杯には出場できなかったので話題にならなかったけど)。そして、EURO2008準決勝を迎え、再び外野がうるさくなってきました。
ドイツにはトルコ移民がたくさん住んでいます。
ドイツでは2000年から移民法(国籍法)として従来の“血統主義”に基づくものから“出生地法”を採択しました。もともと、この法案は「ドイツに永住意思のある外国籍の両親のもと、ドイツで生まれた子は出生と同時に両親の国籍とドイツ国籍が自動的に付与される」というもので、二重国籍を認めるものでした……が、野党のキリスト教民主同盟の反対により修正。結果的に、二重国籍は23歳までで、それまでに1つの国籍を選択しなければならなくなりました。
いまトルコ代表として活躍している選手のなかにもドイツ生まれ、ドイツ育ちの選手がいます。MFのハカン・カディル・バルタはベルリン生まれのベルリン育ちです(確定情報ではないですが、小さい頃はヘルタ・ベルリンの下部組織でプレーしていた模様)。同じくMFのハミト・アルトゥントップはゲルゼンキルヒェン(シャルケ04のホームグラウンド)生まれ。今回代表には選ばれませんでしたが、ハミトの双子の兄弟ハリル・アルトゥントップはもちろん、日韓W杯時には森島寛晃似で話題となったユルドゥライ・バシュトゥルクもドイツのヘルネ生まれで、若いときからドイツのクラブチームでプレーしてきました。
EURO2008準決勝でドイツと当たることが決定したときから、ハミト・アルトゥントップには「どんな気持ちですか?」といった質問が浴びせられたし、ナショナリストのなかには「ドイツを相手に戦うべきでない」という過激な意見も聞かれました。言葉にせずとも、そういったものを匂わせる質問がたくさん発されました。
同じ状況は日本にもあります。在日韓国朝鮮人として日本で生まれ育ち、Jリーグで活躍しながら本籍国の代表選手になる者もいれば、日本国籍を取得して日本人としてプレーする選手もいます。ブラジル人には帰化して代表選手になっている人も多いです(現代表なら田中マルクス闘利王がそうですし、三都主アレサンドロやラモス瑠偉、呂比須ワーグナー、解説でおなじみの宮沢ミシェルなど、みんな帰化選手です)。
私見ですが、彼らはふたつの心を持っているし、ふたつの故郷を持っていると思います。無理矢理ひとつにしろと言う方に無理があると思います。
ハミトに対して「ドイツが相手だから100%の力で戦えない」とか「ドイツを相手にゴールしたら……(怒」なんてナンセンス。ま、言われてる本人は「またか……」とあんまり気にしていないのかもしれませんが。
ちなみに、わが日本は“血統主義ー自国民から生まれた子に自国の国籍の取得を承認するもの”であり、単一国籍しか認めていません。基本的に外国籍を取得した時点で日本国籍は放棄しなければなりませんし、日本国籍を取得した時点で外国籍は放棄することになります。とはいえ例外もあり、ブラジルなどは法改正によって国籍離脱証明書を発行しないことにしたので、日本に帰化したブラジル人はブラジル国籍を喪失していません。欧州でプレーするブラジル人やアルゼンチン人のサッカー選手なども、みな二重国籍です。
ふたつの国籍をもつ……ということはふたつの国の権利を得ると同時に義務を果たさなければならない、ということでもあって簡単な話ではないのかもしれませんが、ブラジルの話を聞くと、それぐらい柔軟(テキトー?)でもいいんじゃないか、という気になります(そもそも呂比須ワグナー帰化をきっかけにブラジルは法改正を行ったのだとか)。トルコもそのへんは柔軟で、たとえ外国籍を取得していても、特殊なパスポートを発行して対応しているようです。どちらが良い、悪いとは一概に言えないけれど、人の心はそう簡単に片方を捨てられるものではないですからね。
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