2008-04-03

1000th anniversary

2008.04.03












 4月1日付けYeni Safak/イェニ・シャファク紙から。

 「ユネスコが2007年を世界メヴラーナ年としたのに続き、2008年をテュルク語、その歴史・文化、地理学の観点から非常に重要な出典となるDivanu Lugati't-Turk(1074年刊)の著者、Kasgarli Mahmud/カシュガルル・マフムッド(英語的には、おそらくカシュガリ・マフムード)年と公布した」

 はじめて知りました、カシュガルル・マフムッド。

 この記事をきっかけにいろいろ調べてみると、前述で彼が書いたと言われているDivanu Lugati't-Turkというのはテュルク語としての最初の包括的な辞書であり、その本には叙事詩、田園詩、教訓詩、叙情詩、哀歌などすべての主要なジャンルを象徴する典型的な四行連句のテュルク語の古い詩の見本、テュルク語の民族が住む地域を示した最初の地図を含んでいます。ゆえに“テュルク語、歴史・文化、地理学の観点から非常に重要な出典”であるわけです。

 カシュガルル・マフムッドさんが生まれたのは1008年、カシュガル(現在の新彊ウイグル自治区)。テュルク語の方言学者、辞書編纂者として活躍し、英語版Wikipediaには「著名なウイグル人学者として記憶されています」と書いてありますから、厳密に言うとトルコ人ではありません(彼の生きた時代はそもそもオスマン帝国でさえ生まれていない時代だし、何々人というカテゴリー自体あまり意味をなしませんが)。ユーラシア大陸に広く分布するテュルク系民族の言語学者だったわけで、そのテュルク諸語を母語とする民族の代表的な国こそ、トルコなわけです。

 そこでトルコはユネスコに申請したのです。去年に引き続き「2008年をカシュガルル年に!」と。ちなみに、ユネスコが提携している2008-2009のアニバーサリー、実は全部で67件あります(気になったのは、アルメニアのウィリアム・サローヤン生誕100周年。大好きなんです〜♪ サローヤン)。まぁ、テュルク諸語を母語とする国のリーダー的存在でもあるトルコですから「ここはわたしたちがっ!」とカシュガルルをトルコ国内はもとより、世界に向けて紹介するために立ち上がったのでしょう。
 ※ユネスコの2008-2009アニバーサリー・リスト
  http://portal.unesco.org/en/ev.php-URL_ID=41546&URL_DO=DO_TOPIC&URL_SECTION=201.html

 昨年のメブラーナのように“躍る修行僧”という目玉がないぶん一般的にアピールするのは難しいかもしれませんが、学術的な面からのアプローチはいろいろあるでしょうし、文化観光省をはじめイスタンブル市、トルコ国内の各大学、組織によっても準備が始められているといいますから、ぜひテュルク諸語系の国や地域との交流も含めて、より大きな活動に広げて欲しいなぁと望んでいます。

 わたしも、ひとつの記事をきっかけにちょっと調べて勉強になりました。カシュガルル・マフムッド。名前だけは頭の片隅に残しておこうっと。本が刊行された1074年と言えば日本は承保元年、白河天皇が在位した平安時代の末期です。その時代にテュルク語の研究のため中央アジアからアナドルを端から端まで、15年もかけてテュルク語系民族が住む地域、街、野営地、山や砂漠を歩き回ったというだけでも、ものすごい熱意。また、時間のあるときにトルコ語版Vikipediaで、少しずつ彼の功績を読み解きたいと思っています。

 ※カシュガルル・マフマッドの生没年について/トルコ語版Vikipediaでは1008ー1105となっており、英語版では1005−1102、ほかの言語版での別の年になっていたり、書いていなかったりしてハッキリしません。英語版では本の発行年も1072年になっています。ただ、2008年が生誕1000周年と認められたのだから、ユネスコ的にも生年は1008年なのでしょう。

 ※写真はカシュガルル・マフムッド、彼の書いた地図、テュルク語系民族の分布とテュルク諸語を母語とする人の数(すべてWikipediaより拝借)

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