2007-07-19

勉強しなけりゃ軍隊が待っている?

2007.07.19 PM19:40

  きょうはトメルで先生が話されたことについて、ちょっと書いてみようと思います。
 どうしてそんな話題になったのか思い出せないのですが、トルコでは男性は全員軍隊に入隊しなければなりません。(以前の日記でも一度書きましたが)ひとりの例外もなく。何らかの事情で行かずに済んで70歳になっていたとしても兵役から逃れることはできません(とは、先生の言葉)。もちろん身体的および精神的に病気である、という診断が下されれば行かなくても良いのですが、そうでない限りは“絶対に”決められた期間、軍隊に入隊することが義務づけられています。

 軍隊の有無とか、その必要性は国の置かれている状況や歴史によっても違うと思うので、その是非は問いません。ただ、わたしが不思議に思ったのは男の子の母親である先生自身が「軍隊に行くのは当然の義務なんだ」という確固とした考えをもっておられた点です。母親なら誰しも自分の子どもを軍隊に行かせたくない、と思うのが心情だと思っていたから。でも、先生の言葉からはそういった感情は微塵も感じられませんでした。たとえ戦争という状況でなくても、トルコ東部・イラク国境付近ではPKKに関連して何かと軍隊の動きが取り沙汰されています。キプロスの問題だって解決しているわけじゃないし。兵役期間に、もしかしてそんな場所へ送られたりしたら……。NATOに加盟しているトルコでは、加盟国に関係する場所で何かが起こればそこへ派兵される可能性だって考えられます。それでも『男たるもの兵役を終えてこそ一人前』なのでしょうか。母親でさえ、そう考えるのでしょうか。

 また、先生は子どもたちに勉強をしろ!という時「勉強しなかったら軍隊に行って鍛えられるのよ(実際は『叩かれる、ぶたれる』という言葉を使われました)」とおっしゃるとか。というのも高校を卒業して大学に進学しなかった場合、彼らには1年半の兵役義務が課せられるから。大学に進学して卒業した場合はたぶん半年。そのほかさまざまな条件がありますが、国に対してお金を払えば現在は3週間の兵役で済むシステムもあるにはあります。が、通常は1年半ないしは半年の兵役義務があるわけです。つまり「勉強せずに大学へ行かなかったら1年半は軍隊で厳しい訓練を受けないといけなくなるのよ」というわけです。※ちなみに、これでも兵役期間は短くなってきています。昔は3年とか、2年とかだったらしいですから。

 兵役というのが当たり前の国・トルコだからこそのエピソードですが、日本国憲法第9条を崇めて育ったわたしの目からは、どうしても奇異に映ります。『男たるもの兵役を終えてこそ一人前』という感覚は、同じく兵役義務の課せられている韓国でも存在します。でも、実際はどうかと言えば、誰も兵役なんて行きたくない、というのが本音。トルコ人だって同じなんじゃないのかな。ただ、声高にイヤと言えない雰囲気があるというだけで。※なお、Wikipediaによると、トルコと韓国は法律上でも制度上でも良心的兵役拒否も認めていません。あとイスラエルとマレーシアでは女性にも兵役義務があります。

 いずれにしろ、兵役というのは行く本人だけでなく、その周り(家族や親戚、恋人、友人など)にとっても同様に課せられる義務なんだなーと感じます。決して逃れることができないのなら、それを受け入れた上で最良の道を考える、、、ってことなんでしょうか。兵役と戦争に行くのとは全然違うでしょうが、わたしには大東亜戦争(太平洋戦争)で天皇陛下バンザーイ!と負け戦に送られていった兵隊さんたちや残された家族の姿がダブって映り、どうしても素直に受け入れられません。彼らが戦う相手にもやっぱり同じように家族や恋人、友人たちがいるわけだし。

 あー、こんなことトルコで語ったら非国民だな、きっと。でも、表には出さなくてもトルコの母親たちだってきっと息子を軍隊になんか行かせたくない。どうしても行かなきゃならないなら、せめて何事もなく無事で返ってきてほしいと日々祈っているはず、と信じたいです(というか、信じています。これほど家族の絆が太いトルコで、そう思わないはずないもの)。

 わたしには残念ながら子どもがいないけれど、もしいたら行かずに済む手段を考えてしまうでしょう。もちろん、本人が行く!というならその考えを尊重しますが、その前に“戦う”ということの、いろんな側面を知ってほしいです。

 補足:トルコの軍隊では教育も行われるそうです。これは聞いた話なので確証はありませんが、トルコの南東部など貧しい地域では子どもたちは満足に小学校にも行かずに働きます。従って、識字率も低いはずなのですが、そのへんの教育を軍隊が担っている部分もあるとか。トルコ男子の識字率が高いのには、そうした事情も絡んでいるようです(※未確認)。

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